【金色合金の配合・腐食について】

【金色合金の配合方法】

 弊社で使用している金色合金、パルヴォン・ゴールドの成分の分析をしますと、この素材にどのよう金属が配合されているかの構成要素を知ることができます。

ただし、検出しようとして検査をしないと通常の検査では出てこない成分も含まれています。また、実際に製造をしてみるとわかりますが、 分析して判明した成分の配合で溶かしてもうまくできません。

どの元素を、どの順番でどのように混ぜるかがとても重要です。これに関しては、かなりの回数の試験を繰り返してできあがった合金ですので、 すぐには製造できません。ちなみに、特許に関しては金属の配合の構成成分の割合についての許容範囲で提出しております。

 

 

 写真は、素材の試験に使用した溶解炉です。金色の合金を製造するときには1,250℃ですが、高温でなければ溶けない金属を混ぜる実験のために1,450℃まで温度を上げることもありました。

そのため、ヒーターはシリコンカーボン素材のものを使用し、温度を測定する熱電対(センサー)もR型という、プラチナ線のものを使用しています。

1回の溶解では、だいたい6~7kgの重量になるような配合をした合金を作ります。

銅、アルミニウム、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ニッケル、鉄、インジウム等々の配合比率を変えて実験を繰り返します。


この溶解炉は可傾式のため、注湯するときには炉をチェーンブロックで吊り上げて作業します。配合比率、温度管理等、様々な実験を行い、失敗を重ねながら完成したのが、高級印鑑に使われている金色素材です。

 

 

【腐食についての一般的知識】

金属の腐食についてのお話です。金色印鑑の素材は腐食に強い特許素材のパルヴォン・ゴールドを使用していますので、それについての説明をいたします。

腐食には色々な形態がありますが、一番単純な腐食は、素材の厚みが次第に減っていくことです。

 

それは、金属が環境の作用で化学的に浸食される現象です。腐食は、一般的に水の存在や温度が高いことによって起こります。(湿食と乾食)

 

乾食の代表的な例は、空気中で起こる「酸化」ですが、酸素との反応による酸化被膜はとても薄いので乾食という点では全く問題になりません。

 

湿食の場合、常温付近では酸素や酸は金属として直接化学反応を起こすことは無く、必ず電気化学的な反応過程を経由します。


電気化学的な反応にはイオンの存在を必要とし、イオンが存在する為の媒体として水が必要になります。

 

私たちの身のまわりにある水は空気にさらされていますので、空気中の窒素や酸素が溶け込んでいる(溶存酸素)、水(湿分)や酸素による腐食反応の結果、腐食生成物(化合物)の皮膜が金属の表面にできるのです。

 

この皮膜がそれ以後の腐食反応を阻害するとき、腐食はずっと遅くなります。

このように金属の表面に酸素や水(湿分)などの反応しやすい気体か液体が触れて、表面に酸化物か水酸化物の酸化被膜が形成されますが、この被膜が時間と共に厚くなってくるにつれて、金属光沢も失われていきます。

 

そのような理由で、金属の光沢を保持するためには、この被膜を抑制する必要があります。

ちなみに、なぜステンレスは錆びにくいのかというと、一般用ステンレスは鉄、クロム、ニッケルの合金で、アルミニウム、クロム、ニッケル、チタン、モリブデンと同じように、金属の表面に不動態皮膜と呼ばれる特殊な皮膜を形成します。

この皮膜は、一種の酸化物で、薄く透明で目に見えません。

 

銅や銅合金の防食皮膜(酸化皮膜)は腐食生成物で、やや時間をかけて生成されますが、これに対して不動態皮膜は環境に触れて瞬間的に出来るものです。

 

パルヴォン・ゴールドは銅合金ですので、防食皮膜(酸化皮膜)が時間とともに生成されていきます。他の銅合金と違う点は、黒ずんできたり緑青(ろくしょう)が発生するということが、通常の大気中では起こらないことです。