【印鑑の製作・機械的性質】

 

【印鑑の製作】

プラネットゴールドでの印鑑の製作は、最初は木型を使った鋳造を行いました。

しかし、製品の中心部分に気泡が入ってしまい、丸棒を切断すると穴が空いてしまっている状態になりました。

その後も木型や鋳造方法を変えて作りましたが、すべて失敗に終わり、印鑑としての製品化は不可能と思われました。


その後、中心部の空洞は無くなったものの、周囲の気泡は無くなりません。

表面を鏡面研磨をしてみると、気泡が直径で1ミリに満たないような気泡でも、それがありますと、側面・上面等に「目立つキズ」となって現れます。

 

気泡を無くすことが常に最大の課題でした。「ス」と言われる気泡は、鋳造のときに発生するガスによって起こり、型に流し込むときにうまく処理をしないと製品の中に入ったままになってしまいます。

 

そのため、1,250℃で鋳造するときの溶けた金色合金の湯の流れをコンピュータでシミュレートしたり、金型鋳造や押し出し等の製造方法を研究したりする日々が続きました。

 

その後、コンピュータの解析や鋳造方法の見直し等により、気泡が含まれないムク材としての印材が完成することとなったのです。

 

金色印鑑が簡単に作ることのできない、非常にレアな印鑑だと言えるのは、素材の研究だけでなく、丸い棒を作る技術も研究を重ねたという理由によります。

 

 

 

【金色合金の機械的性質】

1.硬さ試験

ブリネル式硬さ試験 52HB (10/500)

2.比重

約8.5 (象牙は約1.8なので、およそ4.7倍の重さ)

3.融点

融点 約1,100℃ 溶解温度 約1,250℃

4.引張試験

板厚2.1m/m、幅25m/mの試験片による引張り試験
引張り強さ 893N/mm2 伸び  6%
引張り強さ 463N/mm2 伸び 49%(焼鈍時)

5.抗菌作用に関して

調整菌液0.5mLを試験片に滴下し、ガンマー線ポリエチレン製フィルムをのせて、菌液と検査品を密着し、25℃で24時間保存した後、10mLのSCDLP培地で菌液を十分回収し、試験原液とし、標準寒天平板希釈法により35℃で48時間培養後、出現する生菌数を測定したところ、生存する菌はゼロであった。
(使用菌:Escherichia.coil IFO 3972,Staphylococcus.aureus IFO 12732)

6.かび抵抗試験

JIS Z2911によるかび抵抗性試験方法では、調整菌液0.5mLを試験片に滴下し、25℃で4週間保存した後、出現する菌数を測定したところ、菌糸の発育は認められなかった。(試験菌:アスペルギルスニゲル、ペニシリウムシトリナム、クラドスポリウムクラドスポリイデス、ケトミウムグロボスム)

7.人口汗浸漬試験

水1L中に塩化ナトリウム10g、乳酸1mL、尿素1.5gを溶解し、この液にアンモニア水0.2mLを加えた液中に24時間、試料を浸漬して行った試験では、曇りの変色はみられず、金属光沢を保持し続けた。

8.耐水性能

試験片を鏡面仕上げ後、容器に入れ、試験片の半分まで水道水を満たし、そのまま室内に6か月間置いた試験では、銅や真鍮では表面が黒ずみ、銅においては青錆の発生がみられたが、本製品においては変色はみられず、錆の発生も無く、金属光沢を保持し続けた。なお、蒸発した分の水道水は適宜補充した。